引用元:笑ゥせぇるすまん『谷間のケヤキ』
「第85話『谷間のケヤキ』のネタバレ・レビュー」
についてご紹介していきたいと思います!
「この話の流れを簡潔に知りたい」
「この話のおさらいをしたい」
「この話のオチってどんなだったっけ?」
と気になる方はぜひご覧ください。
あらすじ・レビューにネタバレを含みます。
セリフは省略しているため一語一句同じではありません。
ご了承ください。
『谷間のケヤキ』はこんなお話
ハピエン度 ☆☆☆☆☆
後味の良さ度 ☆☆☆☆☆
怖さ度 ★★★★☆
グ口度 ★★★☆☆
『谷間のケヤキ』のあらすじ
自然の絵を描くのが好きな、画家の木上 守(49)
木上は若い頃からお気に入りの森がありその絵を描くのが好きだったのだが、近年都市開発がどんどんと進み木が切り倒されていき、木上が49歳になる頃にはとうとう木はケヤキの木一本になってしまった。
それでも木上は最後のケヤキを愛で、ずっと絵に描き続けてきた。
しかしある日ケヤキが立つ土地の地主が業者を連れてやってきて、最後のケヤキもついに伐採すると言う。
怒った木上は、
「このケヤキは貴様らが生まれる前からずっとここに立ってるんだぞ!帰れ!帰れ!貴様らのようなやつらがいるから自然環境がどんどん破壊されるんだ!さっさと消えろ!」
と地主に噛み付くが、
「ここはワシの土地だ!どうしようとワシの勝手だろうが!」
と、地主に軽くあしらわれてしまう。
そんな時、ケヤキの葉の陰に喪黒福造が現れ、
「私を切らないでくださ〜い」
とケヤキの木のフリをして、地主と業者を怖がらせて追い払う。
地主たちを追い払った喪黒は、ケヤキを切るなと言っていた木上に、
「だったらこの木を切り倒させないようにあなたが守ればいいじゃありませんか。
このケヤキの上にあなたが住むのです。
籠城するのですよ、そしてあの地主に対して、街の強制に対して徹底抗せんするのです」
とアドバイスをし、
「あなたにぜひ協力させてください」
と、自分もケヤキを守ることに協力すると言う。
喪黒のアドバイスを受けた木上はその気になり、早速ケヤキの上に簡易的な家を作ってそこで籠城を始める。
地主はカンカンになって怒ったが、木上は頑としてケヤキから降りなかった。
するとその内に木上のことをマスコミが取り上げ始め、木上は、
『たった一人で最後の自然のケヤキを守る孤独な画家』
として世間から注目を集める。
木上が長年描き続けてきた自然の絵も「この辺りの土地の変遷がよく分かる」と話題になり欲しがる人が続出し、また木上の絵を展示した個展が開かれたりもした。
絵が売れ、個展が開かれ、予想外に儲かった木上。
木上は、
「ここへ来て絵が売れ、こんな贅沢ができるとは思わなかった!」
と儲かったお金でうな重の出前を頼んだりお酒を飲んだりして、ケヤキの上にいながらも少し贅沢をするようになる。
するとそこへ喪黒がやって来て、
「木上さん、ちょっと有名になり絵が少し売れるようになったからといって初心を忘れてはいけませんよぉ」
と、木上に忠告をする。
喪黒の忠告に、
「もちろんですとも!私はこのケヤキを愛しているんです!この木を守るために最後までたたかう覚悟には変わりありません!」
と、木上は初心を忘れてはいないと熱く答える。
数日後、木上の働きが功を成し『ケヤキを天然記念物に指定してはどうか?』という話が世に出始めた。
この話を知った木上は、
「いいぞぉ、天然記念物に指定されたらもう切ることはできまい」
と喜ぶ。
しかし、そんな木上の元へ再び地主がやって来る。
地主は今までとは打って変わってニコニコとし、
「今日は私、お願いに参りました」
と言い、
「先生がこの木を切り倒すのを承知してくださったら、一生ラクに暮らせるだけの面倒を見させてもらいます。
先生のような優れた芸術家がいつまでもこんなことに関わっていては世界の損失です。
木を切らせてくれたらその代わり、このケヤキは新しく建てるビルの壁画としてその姿を残させていただきます。もちろん先生の筆で。
ケヤキも先生の名もビルと共に永遠に残ることになるわけです」
と、木上の心をくすぐるようなことをあれこれと提案する。
地主はケヤキを天然記念物にされてしまう前になんとか切ってしまわなければと、木上に媚びへつらう方向に変えたのだった。
地主の提案に少し心が揺れた木上は、
「…ちょっと考えさせてくれ」
と困ったように言い、一度地主と別れる。
ひとりになった木上は、
「…私も少々疲れた。
命あるものは短く、芸術は永遠だ。
お前は私の絵の中で永遠に生き続けるんだ、悪く思わんでくれ」
とケヤキに話しかけるように呟き、何日かぶりにケヤキから降りる。
木上はケヤキの命より自分の芸術家としての人生を選んだのだった。
そんな木上の元へ喪黒がやって来る。
喪黒は、
「木上さん、あなたの心変わりは許せません。あなたはケヤキと一心同体になり最後まで木を守るべきです。ドーン!」
と、木上に指を差す。
後日、ケヤキは地主が連れてきた業者によって切られることになった。
地主は、
『いつの間にか籠城していた木上がいなくなった、今の内だ!』
と、これ幸いとケヤキを切ることにしたのだ。
「それじゃあ、取り掛かってもらおうか」
と言う地主の合図で、ケヤキにチェーンソーを入れる業者。
辺りにはチェーンソーのけたたましい音が響く。
そんなチェーンソーの音に混じって、
「助けてくれぇー!俺を切らないでくれぇー!ギャアアアアアア!」
という声が混ざっていたが、その声に気づく者は誰もいなかった。
『谷間のケヤキ』のレビュー
最後、ケヤキの木と一心同体にされてしまう木上さん。
しかも一心同体にされたあとすぐにチェーンソーで切られてしまうので、実質タヒですよね…。なかなか救いようのない話です。
木上さん、そこまで悪いことしてないような気がするのでこの終わり方ははちょっと気の毒な気もします。
最後ケヤキを見捨てたことにはなるのでしょうけど、今まで散々木上さんだけがこのケヤキを愛してきたのだからもういいのでは…なんて思ってしまったりもします。笑
元々切られる予定だった木ですしね。
喪黒さんはつくづく欲をかく人間に厳しいですね
それにしてもこのお話、
『なんか最後の喪黒さんが去っていくシーンに違和感があるな…?』
とずっと思っていたのですが、最近その理由がわかりました。
このお話だけ、喪黒さんが去っていくシーンの風景が夜じゃないのですよね。
というのも、いつもはだいたい喪黒さんが去っていくシーンの風景は夜のネオン街だったり、星が輝く夜の街だったりと、夜の街なことが多いのですよね(ごくまれに夕焼け空の時もありますが)
夜の街ではないシーンから最後の去りシーンが始まったとしても、喪黒さんが去っていくのと同時にいつの間にか風景がぼやけていき最終的には夜の街の風景に変わって終わることが多いのです。
しかしこのお話の最後の去りシーンの風景はずっと曇り空なのですよね。
薄明るい灰色の曇天みたいな空をしています。明るさ的に夜ではない感じです。
これ結構珍しいかもです。
微かな違和感の正体はこれだったみたいです。
何でこのお話だけ(もしかしたら他にも探したらあるかもしれませんが…)夜にしなかったのでしょう?謎です。
去って行くシーンの風景も、いつもは遠くの方にビル群が見えている比較的開けた街並みなことが多いですが、このお話の去って行くシーンの風景は灰色のビル群にすぐ横を囲まれているとても閉塞的な風景になっています(このシーン、ビルもすべて灰色、空も灰色なので、実質喪黒さん以外すべて灰色です)
そのいつもと微妙に違う風景もどうやら違和感に繋がっていたみたいです。
何でしょうね?
喪黒さんが最後、
「環境開発と自然保護のバランスは地球規模の問題ですが、それに人間の欲が絡むから非常に厄介です」
と憂いておられましたので、もしかしたら環境破壊の弊害をあの閉塞的な空間と灰色の風景で表現しているのでしょうかね?
…知らんけど。笑
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